農style fileVol.22

2016.05.27 UP

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NPO法人北海道アグリキャラバン 赤坂若菜さん

北海道の食の魅力を広げる
新感覚イベントの仕掛け人。

道内の生産者と料理人がタッグを組み最高のおいしさを提供する「ウィンターグルメフェスタ2016」。このイベントの舞台裏の物語を。

2016年2月27日、午後6時。北海道屈指のリゾート施設「星野リゾート トマム」のレストラン・ニニヌプリは熱気に包まれていた。北海道の生産者と料理人がタッグを組み最高のおいしさを提供する「ウィンターグルメフェスタ2016」の幕が、今まさに切って落とされようとしていたからだ。席を埋め尽くすのは250名の観客。MCが声を張り上げる。
「いよいよウィンターグルメフェスタの開幕です!」
それを合図に料理人らが一斉に持ち場へ向かう。料理という名のパフォーマンスまで、まるごと堪能できるライブディナーショー。吸い寄せられるように観客は料理が並べられるビュッフェスペースへ。どの顔にも期待の笑顔が満ちている。
その様子を会場の片隅で見つめる一人の女性がいた。赤坂若菜さん。この食のイベントの企画者であり、運営母体NPO法人北海道アグリキャラバンの主要メンバーの一人でもある。

生産者の声を聞きたい
生産の現場で食べてみたい

赤坂さん自身が経営する会社「PATTERN PLANNING」の名刺には、マーケティングプランナーなる肩書が印刷されている。
「お客様は道内の企業がほとんど。社内では対応できないけれど、代理店に頼むほど大がかりでもない、そんな販促企画やプロモーション活動を社員の方々と一緒に考え実行しています」
以前タウン誌の営業スタッフだったこともあり、顧客には食品メーカーが多い。さらに食べ歩きを趣味にするなど、自身も食への関心が高かった。そんな折、すすきので複数の飲食店を展開する(株)タフス・コーポレーション社の代表の田村さんから「実際に生産者を訪ねてみないか」という誘いが舞い込む。
「確か一昨年の初夏だったと思います。生産現場に訪れて、生産者から直接聞き、企業の垣根を超えてみんなで学びにいこうというのが、田村さんの思いでした」このピュアな思いに、他社の飲食店のシェフやスタッフなどが共感した。もちろん赤坂さんも。
「店舗や職業の枠を越えた自由な集いでした。これがとても楽しかった。農産物のウンチク、生産の現場の苦労、数々のエピソード…身近な野菜なのに知らないことだらけ、という驚きも満載でした」
加えて参加者を感動させたのは、農産物のおいしさ。畑はとれたて、もぎたての食材が揃う最高級のレストラン。まして生産者の熱い思いを心に刻んだシェフが作る料理は、都会で味わう料理とは一味も二味も違った。
「最初はニセコの生産者のもとへ。2回目は由仁・長沼エリア。3回目は十勝。あまりに楽しくてワンシーズンで三度も開催したんです」

もっとたくさんの人に
伝えたい、そしてつながりたい。

この催しは畑をまわるという活動から「アグリキャラバン」という名になった。
様々な生産者に出会い、その思いや情熱に心打たれる。さらにその場で料理して味も堪能する。回を重ねる度に参加者は増え、ネットワークは広がっていった。
そんな活動を続ける中で、赤坂さんや田村さんの心には別の感情も芽生えていく。それはもっと多くの人と、この体験や感動を共有したいというもの。
「一般の方に食材や料理を堪能してほしいという気持ちだけでなく、生産者や料理人のつながりを広げることができたらと思いました」
この発想の根幹には、北海道農業と食の未来を憂う思いがある。
人口の減少が招く外食離れ。その加速が懸念される今、飲食業界や生産者を守り育むためには自分の店に執着するのではなく、料理人みんなが手を組み、生産現場や北海道食材の魅力をしっかりと伝えていくことが必要だ。
そんな思いを表現しようとした時「生産者と料理人が一堂に会し、食材と料理のコラボパフォーマンスを提供する」というシナリオが浮かんできた。それが『ウィンターグルメフェスタ』だった。

打ち上げ花火で終わりたくない
の思いで、2016の開催へ

第1回のウィンターグルメフェスタが開催されたのは、2015年2月28日〜3月1日。場所は今回の食材産地「十勝」に近く、イベントへも深い理解を示してくれた星野リゾートトマムに決定した。参加した生産者は自然栽培のジャガイモ農家、養羊牧場のオーナーなど5名ほど。腕をふるう料理人も星野リゾートの総料理長の他、十勝や札幌の著名レストランから招いた。道産食材と道産子シェフの夢の競演だ。赤坂さんはイベントの全体企画や当日の進行などを担当し、田村さんをはじめ他のメンバーは生産者と料理人へその意思を伝え、手探り状態の中準備を進めていった。
用意した約100席はあっという間に完売。イベント当日を不安だらけで迎えた赤坂さんらメンバーだったが、結果的にそれは杞憂に終わる。最高のイベントだった、目前で調理が見られるなんてカンゲキなど、参加した多くのお客様から、さらに生産者や料理人からも、喜びや感動の声が続々と寄せられたからだ。
「率直に嬉しかったですね。お客様、生産者、料理人…参加したみんなが食を通じ一つになった感覚を堪能できましたから」
一方反省点もいくつかあった。こんな演出をしたらもっと伝わったかも、メンバーからも意見やアイデアが生まれた。確かな手応えと僅かな不完全燃焼。その両方の思いを胸に赤坂さんは当初予定のなかったウィンターグルメフェスタ2016の開催を決意したのである。

あの幸せそうな笑顔は、
きっと北海道の元気にもつながるはず

ここにアンケートの束がある。ウィンターグルメフェスタ2016に足を運んだお客様が書き残してくれたものだ。「生産者の顔が見え、作り手の情熱が伝わるイベントでした」「ライブ感があってよかった。料理も最高でした」「おいしいエンターティメント、生産者が見えるヒューマニティ!食事がこんな楽しい体験になるなんて」「北海道グルメの魅力を改めて知ることが出来てしあわせでした。また来たい!」
第1回をさらに上回る評価、そして喜びと称賛の声が連なっている。さらに今回のフェスタの模様は新聞紙上や雑誌、webサイトなどでも広く紹介された。
「今回お招きした生産者は前回の3倍の16名。農だけではなく漁業の方にも参加していただきました。さらにイベントが開催されるずっと前から、料理人と生産者が何度となく打ち合わせをしてくれたからこそ、食材の個性や生産の背景を感じていただける最高の料理の提供につながったのだと思います」
加えて前年の反省を踏まえ、生産者や料理人がお客様のもとに出向き、素材や料理法についてお伝えするという趣向も。そんな生産者、料理人そしてキャラバンメンバーの苦労や心遣いが、第1回を大きく凌駕する高評価を導いたのだ。

ウィンターグルメフェスタ2016のお客様は前回の2倍以上。主催も星野リゾートとなり、より、伝えたい相手に情報が届けられるようになった。「北海道は新鮮な食材に恵まれているから料理人が育たない」なんて、もう誰にも言わせない。新鮮な食材だけが目当てならインターネットで手に入る時代、北海道に足を運んでこそ、北海道の素晴らしい食材と料理人が創り出す本物の北海道の食が味わえるということを知ってもらいたい。それは北海道に来ないと味わえないものだということを、日本中に、いや海外にも発信したいのだ。
「いろんな思いがあるけれど、やっぱり一番胸に残るのは参加してくれた人たちの、あの笑顔。お客様から伝わってくる興奮。普段はこんな大勢の前で話すことなんてないのに、一生懸命伝えようと話をしてくれる生産者。そして、一度に200人以上の料理をビュッフェスタイルで、ライブで仕上げてと、様々な制約があって大変なはずなのに、本当に楽しそうにイキイキと仕事をする料理人の笑顔。これは何も代えがたいくらいのご馳走ですよ(笑)」

取材・文 山本 公紀

写真 工藤 了

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