幕別町 折笠農場 場主 折笠健(ますらお)さん

無肥料無農薬栽培で作物本来の能力を引き出す
ジャガイモ栽培の“再開拓者”

北海道の野菜はおいしい、気候のおかげで農薬が少なくて済むから、と言われる。しかし、折笠農場のように無肥料無農薬のジャガイモ、というのは珍しい。食べると土野菜なのに雑味がない、といいたくなるような澄んだ味がする。

農場の作付面積は、70ha。他県では考えられない広さだ。このうちおよそ1/3が減農薬減化学肥料のジャガイモと無農薬有機肥料のトウモロコシ、カボチャで、主に生協向け。もう1/3が無肥料無農薬のジャガイモ、豆類、ミニトマトで、直販や自然食品販売店で売る。残り1/3は緑肥のえん麦を植え、土にすき込み翌年に備える。最新技術で効率化する大農家の目立つ十勝で、独自の存在だ。

露地畑のほか、トマトのハウス、出荷作業のための建物や予冷庫などが立ち並ぶ、大農場だ。白、黒、緑と大豆品種の違いが畑を色分けする。

折笠農場のジャガイモやカボチャは、豆と野菜にこだわる「十勝純粋酢」シリーズの原料にもなっている。

折笠農場のジャガイモやカボチャは、豆と野菜にこだわる「十勝純粋酢」シリーズの原料にもなっている。

場主の折笠健(ますらお)さん(41歳)は、明るい語り口の開拓4代目。

3代目の父・秀勝さんは、ビート(てんさい)の反当たり収量で2年連続全道1位に輝いた経験がある。その時、土が痩せるのをありありと感じ、緑肥を取り入れた減農薬農法にシフトしたという。同じ頃に生まれた健さんは父とともに、農地を開拓時代の豊かな土に戻す、継続可能な農法を探っていた。「奇跡のリンゴ」で知られる青森県・弘前の自然農法家、木村秋則さんと出会ったのはちょうどその頃、今から10年前だ。

初対面の木村さんに、健さんは日頃の疑問をぶつけてみた。
「緑肥は青いまますき込むのと、チョッパーで粉々にして枯れた状態ですき込むのと、どちらがいいですか」
「近くの山を見てみなさい、自然界で青い葉っぱが土に入るかい? 自然を観察し理解できなければ、自然農法はできないよ」
不可能と言われたリンゴの無肥料無農薬栽培に木村さんが成功したのは、偶然の「奇跡」ではなく、自然の摂理にかなったことなのだ。そう感じた時、新たな視界が開けた。

通りすがりなら一面の雑草だが、目を凝らせば黄色いイモの苗が見えてくる。自然に枯れた頃が収穫期だ。

火山灰の多い土に与えるのは緑肥のみ。土壌中の微生物のデータは、大学の研究者によって蓄積されている。

完全無肥料無農薬の畑で、試し掘りしたイモはホッカイコガネ。農法に適した品種として最初に取り組んだ品種だ。

減農薬の畑に植える品種はシャドークイーン、インカのめざめ、ホッカイコガネ、花標津。健さんが手に取るのはサヤアカネ。

取材当日は減農薬有機栽培のトウモロコシの収穫が終盤。全国の顧客へ送り終わった頃には、ジャガイモの収穫時期だ。

(取材・文/フードライター 深江園子)
参考:「木村秋則自然栽培研究会・北海道」http://kimura-akinori.jp/